読者からの質問と回答 01251 〜 01260

K.I.さんからの質問 #01257

第7章,p154, なぜ cX = Cl_{Y}h(X) は X の完備化なのでしょうか.

第7章,p154, 定理7.37の直前の段落「一般に,・・・」の記述についての質問です.
cX = Cl_{Y}h(X) とおくと,cX は Y の閉集合であり Y は完備なので, 定理7.20 (2) より cX も完備だと思います. しかし,そうだからといって,cX は X の完備化であるとなぜいえるのでしょうか.
定義7.35 によれば,h(X) が cX = Cl_{Y}h(X) において稠密である必要がありますが, どうすればそれがいえるのでしょうか.

お答えします:

154ページの説明で「なぜ h(X) は cX で稠密か」というご質問と思います.

命題2.24において,X を cX, A を h(X) と考えると,
Cl_{cX}h(X) = cX ∩ Cl_{Y}h(X) = cX ∩ cX = cX.
ゆえに,cX における h(X) の閉包が cX になるので, h(X) は cX で稠密です.

念のため,命題2.24を使わない直接証明を与えます.
補題3.40より,cX の任意の空でない開集合 U が h(X) と交わることを示せばよい.
最初に,U は空でないので,U の点 x をとる.
いま cX を Y の部分空間と考えているので,定理2.15 (1) より, U = G ∩ cX である Y の開集合 G が存在する.
このとき,G は Y における x の近傍.
いま x は cX の点,すなわち,Y における h(X) の閉包の点だから, 補題2.27 (4) より G ∩ h(X) ≠ φ.
いま h(X) ⊆ cX だから,h(X) = cX ∩ h(X).
結果として, U ∩ h(X) = G ∩ cX ∩ h(X) = G ∩ h(X) ≠ φ.
ゆえに,U は h(X) と交わる.

長くなりましたが,簡単にいえば,
位相空間 Y の部分集合 A の閉包を B とするとき, A は B で稠密であるということです.
最後になりましたが, 『深めよう位相空間』のご購読に心より御礼申し上げます.


N さんからの質問 #01256

第14章,演習14.1.3で難儀しています.

ヒント [2, Problem 3.12.12 (g)] を参照せざるを得なかったのですが,等式
p^{-1}_{S(a)}p_{S(a)}(a) = f^{-1}f(a) ・・・(*)
について, X の各点の指標が可算ならば左辺が右辺に含まれるような S(a) が容易に定義できることはわかりますが, 等式が成立するように S(a) が定まるかが不明で,手探りの状況です.
ご助言,お願いいたします.

お答えします:

ヒントの[2, 3.12.12(g)] を見ておりますが, ご質問の中の等式 (*) が成立するような S(a) は必ずしも存在しないように思います. N さんが書かれているように左辺が右辺に含まれるような S(a) は存在しますが, それで証明を進めることはできないでしょうか. ご検討下さい.
演習14.1.3の解を与えるためには [2, 3.12.12(g)] を解読すればよいのですが, ヒントとしては [2, 3.12.12(e)] の方が適切だったと気づきました.
参考までに, 演習14.1.3の解答例を与えます.
最後になりましたが, 『深めよう位相空間』のご購読に心より御礼申し上げます.


Y.U.さんからの質問 #01255

第4章,問6についての質問です.

以前にも質問したことがあります. 数学ができるようになりたいと思い,日々勉強しています.
『はじめよう位相空間』 の第4章,問6で質問です.
極座標表示された2次元閉球体の図がどうなるかわからないです.
{(r,θ) : 0 ≦ r < 1} は半径1の開円板.
{(r,θ+π/2) : 1 ≦ r ≦ 2} は半径 2 の真ん中が空いている円板.
この2つを合わせると,半径 2 の2次元閉球体ができて, 連続でない点があるとは思えないです.
教えていただけるとありがたいです.

お答えします:

写像 f : B^2 —> B^2 は,定義域も終域も半径が2の B^2 で,それらの形は変化しません.
しかし,写像 f によって,B^2 の 1 ≦ r ≦ 2 の部分だけが π/2 回転します.
そのため,動かない 0 ≦ r < 1 の部分と,回転する 1 ≦ r ≦ 2 の部分の境界である r = 1 である点では,f が不連続になります.
その理由は,解答に書かれている通りです.

これで回答になったでしょうか. ご理解が進むことを祈っています.


K.E.さんからの質問 #01254

連結コンパクト集合で結べない2点をもつ連結空間の例を教えて下さい.

お答えします:

平面 R^2 上の部分空間
X = {(0,y) : y ∈ R} ∪ {(x, (1/x)\sin(1/x)) : x > 0}
はどうでしょうか.
原点と点 (1, sin 1) を含む X の compact 連結集合は存在しません.


N.W.さんからの質問 #01253

第15章,例15.2 の集合族 A^ と Av がなぜそのような集合になるのかわかりません.

数学が大好きな社会人で, 『はじめての集合と位相』 で勉強させて頂いております. どうしてもわからないところがありまして,質問させて頂きました.

201ページの例15.2ですが, A^ と Av がなぜそのような集合になるのかわかりません.
条件にある B は,A の部分集合ですので,以下のようになると思っています.
空集合, {{a}}, {{b}}, {{a}, {b}}.
このような B に対して, ∪B, ∩B を計算すればよいと思うのですが, 解のようにはなりません.

お答えします:

集合族 BA の候補は,上に書かれた4つの集合族の通りです.
最初に,A^ について:(15.1)と(15.2)より,
B = 空集合のとき,∩B = X, 
B = {{a}} のとき,∩B = {a}, 
B = {{b}} のとき,∩B = {b}, 
B = {{a},{b}}のとき,∩B = {a}∩{b} = 空集合.
ゆえに, A^ = {空集合, {a}, {b}, X}.

次に,Av について:(15.1)と(15.2)より,
B = 空集合のとき,∪B = 空集合,
B = {{a}} のとき,∪B = {a},
B = {{b}} のとき,∪B = {b},
B = {{a},{b}}のとき,∪B = {a}∪{b} = {a, b}.
ゆえに, Av = {空集合, {a}, {b}, {a, b}}.

以上で回答になったでしょうか.
最後になりましたが, 『はじめての集合と位相』のご購読に, 心より御礼申し上げます.


S.A.さんからの質問 #01252

連続全射写像が閉写像になるための条件について教えて下さい.

連続全射写像 f : (X,O[X]) → (Y, O[Y]) が閉写像であることを示すためには,
任意の U ∈ O[X] に対して,{y ∈ Y : f^{-1}(y) ⊂ U} ∈ O[Y]
であることを示せばよいのでしょうか.

お答えします:

よいと思います. {y ∈ Y : f^{-1}(y) ⊂ U} = Y - f(X - U) とかけるからです.
X の任意の開集合 U に対して, Y - f(X - U) が Y の開集合であることは,
X の任意の閉集合 X - U に対して,f(X - U) が Y の閉集合になることと同値です.

以上で回答になったでしょうか.


S.A.さんからの質問 #01251

誘導位相をもつ位相空間 Y への全射連続写像が閉写像にならない例を教えて下さい.

連結ハウスドルフ空間 (X,O[X]) と全射写像 f : X → Y に対して f が連続写像になるように誘導位相をY にいれます.
つまり,O[Y] = {V ⊂ Y : f^{-1}(V) ∈ O[X]} です.
この誘導位相の定め方は f が閉写像であるための必要十分条件
「開集合 U に対して,{y ∈ Y : f^{-1}(y) ⊂ U} が開集合」
に似ていますが f が閉写像になる例とならない例を教えてください.

お答えします:

閉写像にならない例:
通常の距離をもつ平面 R^2 と通常の距離をもつ数直線 R, および,R^2 から R への射影 f を考える.
このとき,R の位相は f による誘導位相であるが,f は閉写像でない.
たとえば,y=1/x のグラフ G は R^2 の閉集合であるが,f(G) は R の閉集合でない.

閉写像になる例:
自明なことですが,たとえば,上の R に対して,R から R への恒等写像はその例です.

以上で回答になったでしょうか.


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